アスリートの水分補給
初夏の陽気が心地良い時期になってきました。今回は、アスリートの水分補給について、アスリート栄養学と薬膳からお話ししたいと思います。
激しいトレーニングや試合の後は、疲れて食欲も落ちがちですが、水分補給はしっかりと行いたいものです。人体の60%は水分ですが、体重の2%が失われると、アスリートのパフォーマンスは低下します。汗による体温調節が出来なくなり、老廃物がたまり、血液の循環が悪くなってしまうのです。
特に練習後30分のゴールデンタイムと言われる時間に何を飲むのかが、大切になってきます。
練習後の身体はカラカラに乾いたスポンジのようになっていて、栄養の吸収が一番高い時です。その時に、砂糖や添加物たっぷりの炭酸飲料を飲む事は、アスリートはもちろん、お子様にはオススメしません。
練習後に飲むのに適している飲み物として、「オレンジジュース」「牛乳」「麦茶」「スポーツドリンク」が挙げられます。
通常の遊びや運動での水分補給は、ノンカフェインの麦茶で十分なのですが、アスリートとなると、水分補給の目的も少し変わって来ます。
スポーツドリンクは、練習前後、練習中の水分補給に最適です。スポーツドリンクには、アイソトニック飲料とハイポトニック飲料があります。
練習前の糖分補給には、人の体液と同じ浸透圧のアイソトニック飲料を。練習中は、人の体液よりも浸透圧が低いハイポトニック飲料を選ぶと、より素早く水分が体内に補給できます。
水分は、小腸で吸収されるので、吸収までに時間がかかります。喉が渇いたと感じた時には、既に身体の水分は不足しています。15〜20分おきに、こまめに水分補給すると良いでしょう。今は、サッカーの試合中なども、水分補給タイムが設けられ、熱中症にならない配慮がなされていますね。
日本体育協会では、水分補給時の塩分を、0,1〜0,2%と定めています。ナトリウムでいうと、40〜80mg/100ml入ったものを推奨しています。水分とともに、体内の電解質(イオン)も失われてしまうので、適度に塩分や糖分の入った飲料を取り入れるのが良いでしょう。
「オレンジジュース」は、ビタミン・ミネラルの補給、「牛乳」は、たんぱく質・カルシウムの補給になります。運動後の30分のゴールデンタイムには、水分補給と共に栄養補給も心掛けたいものです。
ドリンクにプラスしたい栄養素
練習後30分以内に、筋肉や骨になる「たんぱく質」、痛んだ靭帯や筋を修復する「ビタミンC」などを積極的に摂ることをオススメします。
運動後すぐに、おにぎりなどで、糖質を補給すると良いと言われますが、これからの時期、暑さと疲れでなかなか米粒が喉を通らない事もあります。そのような時は、先ほど挙げた飲み物にプラス、ヨーグルト・果物などで、手軽にビタミン・ミネラル・カルシウムを補給出来るといいですね。
ヨーグルトなどは、プロサッカーチームでも常備していて、補食として大きな役目を果しています。
カルシウムは元々吸収されにくい性質ですから、乳製品を上手く取り入れるとよいでしょう。もちろん小魚からの摂取も忘れずに!また、果物は、殆どが水分で構成され、糖質・ビタミン・ミネラルも豊富なので、運動後にも最適です。疲れていて、ごはん類が喉を通らなくても、果物なら喉を通るでしょう。これから熱くなる時期は、果物を上手く利用し、運動後に、少しでも食べやすい状態で口に入れられるといいですね。
理想を言うと、フルーツや緑黄色野菜の入ったスムージが満腹感もありオススメなのですが、試合後直ぐに、スムージーを飲める環境はなかなか整っていないので、コンビニなども上手く活用し、カラカラに乾いた身体にしっかりと栄養を入れて頂きたいと思います。
身体の熱を取り除く食材(薬膳)
では、水分補給について薬膳の視点からお伝えしようと思います。
夏は汗をかきすぎると水分の代謝が乱れて、唇や舌が乾く、大便が硬くなる、尿が黄色くなる、気分が不安定になり、けだるくなるといった症状があらわれます。
夏の養生としては、暑さをしっかり防ぎ、水分補給をする事です。
また、【収斂(しゅうれん)作用=ひきしめる】のある【酸味】を摂る事で、汗のかき過ぎを抑えることが出来ます。
漢方の養生でも、水分補給のポイントは、《少量をこまめに》です。
薬膳では、清熱(せいねつ)・利水(りすい)作用のある食物を摂る事で、身体の内側にこもっている熱を取り除きます。そうすると身体の内側から冷やされるので、熱中症予防にもなります。
清熱・利水作用のある食物は夏野菜に代表されるキュウリ・トマト・ナス・ゴーヤ・とうがん、夏の果物の代表スイカなどがあります。トウモロコシや枝豆などの豆類も、利水作用があるので、積極的に食べて欲しい食材ですね。
しかしながら、汗と一緒に「気」を消耗してしまうので、元気を補う「補気=ほき食材」を摂る必要があります。ご飯・豆類・芋類はもちろん、かぼちゃやにんじんなどの甘みのある野菜。漢方食材では、高麗人参やなつめなどを活用し、効率よく気を補充して、元気に夏を過ごして頂きたいと思います。
自発的脱水症とは?
「自発的脱水症」という言葉を聞いた事があるでしょうか?
水分補給として一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質バランスを崩して体調不良を引き起こしてしまう症状です。
飲む量は、かいた汗の量を目安にし、汗で失われる塩分(ナトリウム)もきちんと補給する必要があるのです。
私たちの身体には、約0.9%の食塩水と同じ浸透圧の血液が循環しています。また汗をかいた肌をなめると塩辛い味がすることからわかるように、汗にはナトリウムが含まれています。大量に汗をかいてナトリウムが失われたとき、水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まり、これ以上ナトリウム濃度を下げないために水を飲む気持ちがなくなります。同時に余分な水分を尿として排泄します。これが「自発的脱水症」と呼ばれるものです。この状態になると汗をかく前の体液の量を回復できなくなり、運動能力が低下し、体温が上昇して、熱中症の原因となります。
アスリートのように、炎天下で大量の汗をかく人は、水分補給の仕方も、ちょっとしたコツが必要なのです。決して、スポーツドリンクを大量に飲む事を進めたり、ミネラルフォーターを否定している訳ではありません。
水分と共に失った塩分も補給して、体液のバランスが悪くならないような保つ必要があるのです。
水分補給のポイントは、「少量をこまめに!」です。熱中症に負けない身体に作りで、お子様の最大限の力を発揮出来るようにサポートしてあげたいですね!